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ぽぜおくんの憑依日記

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憑依飲み会

(2017/1/15追記)
憑依ラヴァーの憑依好きの人さんから、カスタムメイド3Dによる挿絵を頂きました! 有難うございます!

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暖色で固められたイルミネーションとは対照的に、降りしきる粉雪は次々と路上に層を重ね始めていた。今年一番と噂の冷え込みは伊達ではなく、こうして歩いているだけでもコートを突き抜けてくる風に体温が奪われていくのが実感出来る程だ。ポケットに突っ込んだ手を携帯と共に嫌々引きずり出した俺は、ホーム画面に表示された時刻を確認しながら溜息を吐いた。
分かってはいたことだが、待ち合わせの時間を五分近く過ぎてしまっている。それもこれも少々雪が積もったぐらいでダイヤを乱す交通機関が悪いのだ。そう頭の中でぼやきながら、そそくさと暖かなポケットの中に携帯を戻す。遅刻をするつもりなど勿論さらさら無かったのだが、こうなってしまった以上は仕方がない。足を滑らせないように気を使いつつ、俺は待ち合わせ場所へ向かう足を速めた。
そういえば駅前の公園で集まるという話にはなっていた筈だが、具体的な目印などは指定されていなかった気がする。あの広い公園の中で上手く落ち合えるものだろうか。そう思いながらようやく公園にたどり着いた俺は、噴水前で固まっていた集団を一目見てその心配が杞憂だったことを知り、手を振りながら駆け寄った。

「ごめんなさい、遅くなりましたー」

この寒さにもかかわらず公園の中にはそれなりに人通りが有ったのだが、俺はそれが目当ての集団であることを確信していた。俺の呼び掛けに振り返った面々は嫌な顔をするでもなく、手を振り返しながら各々お決まりの挨拶を口にした。

「おつかれさま、遅かったねー」
「おつかれ、何かあったの?」
「いやーちょっと電車が雪で……あ、 おつかれさまです」

頭を掻きつつ挨拶と弁解を同時に済ませた俺は、その面々の顔を順々に覗き込んで軽く息を吐いた。何しろ皆が皆これ以上無い程に整った容姿を備えているのだ。遠目からでも見間違えなかったのも頷ける話だった。
十人を越えるその集団にはいくつかの共通項が有った。揃って女性であることと、均整の取れた顔立ちをしていることと、それともう一つ。

「それじゃ揃ったみたいだし行きましょうか?」
「そうだね、いい加減寒くなってきたし」
「行きましょうかー」

高校生と思しき制服姿の少女の一言を皮切りに、十を越える美女或いは美少女たちが一斉に歩き出す。毎度思うことだが中々壮観だ。年齢層はばらばらで、見たところ二十代の女性が多い様だったが、先程の女子高生の他にも背格好の小さな少女がちらほら見受けられた。先頭から二番目を歩く少女などは特に小柄で、あれは中◯生か、或いはまさか……

「ねえ、それめちゃくちゃ可愛いじゃん。どこで拾ったの?」
「えっ、ああ。家の近くのショッピングモールで……」

隣を歩いていた女性の掴み所のない唐突な質問に、思わずどもりながら返してしまう。こちらをしげしげと覗き込むその女性も、ご多分に漏れずかなりの美人であった。軽くパーマのかかった茶髪が印象的で、厚く重ね着をしながらも隠しきれていない抜群のプロポーションに俺は息を飲んだ。

1_2.png


「ちょっとちょっと、見すぎだって」
「あ……ご、ごめんなさい」
「ふふっ、こっちも中々でしょ? 」
「ええ、まあ……」

決まり悪く前に目を向けると、同じように談笑する女性の二人組。紺色のダウンコートに身を包んだ女性は後ろからでもモデルか何かかと見紛う程で、漂う香水の香りが芳しかった。厚手のパーカーを着た少女はそれとは対照的だが、ニット帽からはみ出した艶やかな黒髪が美しい。右を見ても左を見ても溜息を吐くばかりで、目のやり場に困るとはある意味この状況のことを言っているのかもしれないなどと思っていると、前を歩く彼女たちが突然足を止めたものだから思わずぶつかりそうになってしまった。
ふと前を見ると、大手チェーンの居酒屋の看板が目に入った。どうやらいつの間にか目的地に着いてしまっていたらしい。先程号令をかけていた女子高生が店の戸を引き、店内の様子を伺った後、手招きで俺たちも入るように促した。動作の一つ一つが可愛らしいな、などと考えながら横を見ると、隣の彼女も同じことを考えていたらしく、その端正な顔立ちには似合わない下卑た笑みを浮かべながら「やっぱ良いよな、JK」などと呟くのであった。

「はいはーい、奥から適当に詰めちゃってくださーい」

案内された先の個室でも件の女子高生は忙しなく音頭を取っていた。遅刻してしまったのでいまいち事情を把握し切れていないのだが、恐らく彼女が幹事なのだろう。しかし制服姿の少女に似つかわしいとはとても言えない場所であの目立ち様、大丈夫なのだろうか。そういえば案内をしていた店員もどことなく戸惑った表情を見せていた気がする。怪しげな美女の集団が突然居酒屋に現れ、おまけにそれを女子高生が仕切っているのだから無理もないことなのだが。

「あの、今日はコースとなっておりまして……その、ドリンクの方は」

再度現れた男性店員はやはり困惑した様子で、しかし何とか淡々と仕事をこなそうとしているようだった。そんな彼を前にしてまた女子高生が「はーい、生の人手挙げてー」などと言うものだから、彼がコースの詳細を説明し忘れてしまったのも仕方のない話だ。

「それじゃ皆さんお手元の方はよろしいでしょうか?」

全員分の飲み物が行き渡った後、立ち上がって挨拶を務めたのはやはりあの女子高生だった。彼女が幹事だということは間違いないらしく、それはつまり彼女がサトウであることを意味していた。

「では早速。えー、本日はお忙しい中こうして憑依飲み会にお集まり頂きまして、どうもありがとうございます」

憑依飲み会。俺たちはこの集まりのことをそう呼んでいた。安直過ぎるネーミングと言われればそうなのだが、何時からか誰かがそう呼び始めたので皆がそれに従い、今日もまたこうして集まったのだった。
この場にいるのは皆、お互いが顔も知らない間柄の者ばかりであった。それは本来の「俺たち」同士は勿論のこと、今こうして鍋を囲んでいる女性たちの身体についても言えることだ。彼女たちは自らの意思でこの場に赴いたのではない。

「早いものでこの集まりも第十七回を数えました。これも皆さんのたゆまぬ探求心があってこそでありまして――」

世の中には常識では計ることの出来ない特異な力を持った人間がいる。それは例えば手を触れることなく物を動かすことが出来たり、一瞬の間に何千キロもの距離を移動することが出来たり、或いは他人の身体に乗り移って意のままに操ることが出来たり、といった具合に。
憑依飲み会は読んで字の如く、その他人に乗り移ることが出来る力を持つ人間の集まりだ。もっとも集まるのは本人そのものではなく、運悪くも彼らに目を付けられた女性たちなのだが。
勿論俺もその例外ではない。コートを脱いで現れたのはセーターに包まれたFカップ。視界の端には絶えず甘い匂い香りを放つさらさらのセミロング。両の脚はしなやかで、その間には野暮ったいモノなど付いていない。近所のショッピングモールで出会った女子大生の身体だ。彼女は休日に買い物に出掛け、そこで偶然俺の幽体と鉢合わせてしまったばかりに、身体を乗っ取られた挙げ句にこうして来る筈もなかった居酒屋の席に着かされている。見た目に気を使うのは良いことばかりではない、とは誰の言葉だったか。憑依などという力を身に付けた人間が考えることなど、大抵ろくなものではないのだ。

「お若い方も、もっとお若い方もですね。様々な方がいらっしゃるわけですが――」
「幹事、挨拶長いぞー」

延々続いていた女子高生らしからぬ口上は、隣に座っていたモデル風の女性の言葉で唐突に遮られた。長い挨拶が嫌われるのはどこでも同じなのだろう。女子高生は少しばつの悪そうな表情を浮かべた後、気を取り直したと言わんばかりの笑顔に切り替えて挨拶を締めにかかった。

「いやはや申し訳ない。ええと、それじゃ最後にですね。申し遅れましたが本日幹事を務めさせて頂きます私、中身はサトウでございます」

挨拶の最後に名乗る幹事も珍しいだろうが、中身の紹介ともなると尚更だろう。サトウは足元を見回し座敷のスペースを確認してから、軽やかに女子高生の身体を一回転させた。チェック柄のスカートがふわりと浮き上がり、会場からは「おおっ」と声が沸き上がった。

「でも今はピチピチの現役JKでーす! それではっ、このJKのおっぱいの更なる成長と健康を祈って……かんぱーい!」
「「「乾杯~!」」」

4.png 3_2.jpg



やたらと親父臭い乾杯の合図と共に、各々がグラスをかち合わせる音が響いた。ピチピチいう言葉選びが既にピチピチではない気もするが、そこは気にしないことにしておこう。
サトウとは何度か話し込んだことが有るが、恐らく彼本人は四十か下手をすれば五十を回った中年男性だろうと窺われた。中身の素性を詮索するのは基本的に好ましいことではないのだが、そんな彼に良いように身体を操られている女子高生の姿を見ていると、気の毒な一方で正直何だか興奮してしまうような何とも言えない気分に囚われるのだった。

「今日さ、未成年の娘多いみたいだけど大丈夫なのかな」

乾杯も済んで皆が料理をつつく中、隣からそんな声が聞こえてきた。さっきのパーマの女性だ。言われてみれば確かに、ここまで堂々と良からぬ酒の勧め方をしている場面など中々無かった気もする。ふとテーブルの向かいに目をやると、なんと例の小柄な少女まで生ビールをあおっているではないか。流石に不味いのではないかという気もした俺は、しかし声を潜めつつ曖昧な返事を返すことしか出来なかった

「いや確かに、どうなんでしょう。未成年連れてくる時には基本宅飲みでしたよね」
「あー、多分大丈夫っすよ。サトウさんそこら辺はしっかりしてるんで」

唐突に割り込んで来たのは、俺を挟んで反対側に座っていたパーカー姿の少女だった。先程はニット帽を後ろから眺めていただけだったが、こうして面と向かってみると思いの外清楚な印象を受ける顔立ちをしていた。それにしても大丈夫とは、一体どういうことなのだろう。俺は「大丈夫って?」と疑問をそのまま口に出してみた。

「この飲み屋そういうのチクる感じの店じゃないって、なんか下調べとかしてたみたいっすよ」
「あ、ああ。そうなんだ」

例によって顔に似合わぬ言葉使いで事も無げに言い放つ少女。もっとしっかりとした根拠が出てくるのかと思いきや、多分大学が近くにあるからとかそういう理由なのだろうが、意外と普通の答えが返ってきたものだから拍子抜けしてしまう。先程の店員の対応を見るに、この集まりばかりは例外として扱われそうな気がしてならないのだが。

「てかヤバそうになったら店員乗っ取ればいいし、最悪身体捨てて逃げればオーケーすよ」
「まあ、そうですね。そうですよね」

俺もとやかく言える立場ではないのだが、それにしてもしれっと大変なことを言うものだ。こんなことを宣いそうな輩の心当たりは、まあ山ほど有るのだが、口調からして中身はヒグチかナカムラだろうか。ともかく適当な返事をしてお茶を濁しておいた。
その会話から逃れるかのように周囲に目を向けると、他の者も何気の無い様子で酒を飲みながら料理に舌鼓を打っているようだった。他人の身体で食べる料理は、普段とは全く違った味わいが感じられて中々に新鮮なものなのだ。これも憑依飲み会の醍醐味の一つであることは間違いなかった。女子高生がモデル美女に酌をされている様は異様以外の何者でもなかったが、姿形を除けばそれはごくごく普通の飲み物と変わりの無い光景であった。しかしそれだけでは終わらないのがこの場が憑依飲み会たる所以である。

「はーい、それでは毎度毎度ではありますがー、ここでそろそろ自己紹介の時間に移りたいと思いまーす」
「おっ、待ってましたー!」

酒が回ったのか、少々覚束ない様子で声を上げたのは女子高生もといサトウであった。どことなく期待に満ちた様子でそれに応える女性たち。
この場にいる者たちは、中身の人間は皆少なくとも一度は言葉を交わしたことの有る者同士だ。他人の身体を借りての話ではあるが、今更自己紹介をするような間柄ではない。しかしこの自己紹介こそが、皆が楽しみの一つとしている憑依飲み会の一大イベントなのである。皆の視線は今、改めて席に座り直した女子高生に集められていた。

「じゃあ早速、まずは私から紹介させて頂きまーす……あうっ」

ほろ酔い調子で喋っていた筈の女子高生が突然身体をビクンと震わせ、後ろの壁にぐったりと寄りかかる。皆が黙ってその様子を見守る中、虚ろだった女子高生の瞳に再び光が戻り、身体を起こすまでがおよそ十秒と少し。その後もぼんやりとした様子できょろきょろと辺りを見回している女子高生の姿を、尚誰もが一言も発することなく食い入るように見つめていた。

「……あ、あれ……ここは……? なんで、あれ、私……制服……」

うわ言のように呟く女子高生は自分が何故こんなところにいるのか、それ自体が理解出来ていないようだった。それもその筈、身体を乗っ取られている間は本人の意識は奥底へと追いやられ、眠っているのと何ら変わり無い状態となるのだ。
彼女からしてみれば、突然意識を失った末に見たこともない居酒屋の一室で目を覚ましたということになるのだから、訳が分からないのも当然だ。おまけに目の前にずらりと並んでいるのは、これまた見たことも無い女性たちのにやにや顔だ。段々と状況を把握しつつある様子の彼女は、それでもまだ信じられないといった様子でおろおろと視線を泳がせ続けていた。

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「なん、なんで……私、家で……あの、あなたたち、誰ですか……誰、なんですか……?」

応える者はいない。代わりに「かわいそー」という呟きがどこからか聞こえ、いくつかの籠った笑い声がその後を追った。粘っこい視線を一身に受け続ける女子高生は、最早目に涙を浮かべながら「どこなの、なんで」と繰り返している。
誰も助けてはくれないことを悟ったのか、女子高生は震える脚を支えながらなんとか立ち上がり、入り口の襖に目をやった。だがそこから出るには隣に座るモデル美女と他数人の前を跨がなければならない。

「あの、あの……すいません、私、帰る……か、帰ります、ので、どいてくれませんか……?」

多分精一杯の勇気を振り絞っての提案だったのだろう。震えに震えたその声は、離れた席からだと聞き取るのがやっとだった。しかしそれでもモデル美女は応えることなく、むしろ鼻の穴を広げながら息を荒くするだけだった。

「ひっ……や、やだ、嫌っ」

女子高生は身の危険を感じたのか、なりふりかまっていられないとばかりにテーブルの上に足をかけた。そのまま乗り越え行くかと思われた時、彼女の身体が再びビクンと大きく震え、その動きは引き留められた。

「かはっ! ……あ、うぁっ……」

女子高生の身体が力なく崩れ落ちる前に、それを受け止めたのはモデル美女の両腕だった。膝立ちのまま、慣れた動作で女子高生の身体を支えつつテーブルの上から降ろし、優しく両腕の中に抱え込む。ほうと一息吐いた後に女子高生の頭を撫でながら、モデル美女は「やりすぎでしょ」とだけ呟いた。

「……いやー、申し訳ない。……ぐすん、だってあれは反則ですよ。続き見たくなっちゃいますって」

鼻をすすり涙を拭い、ついでにその涙をぺろりと舐め取った女子高生の顔には、もう恐怖の色は浮かんでいなかった。興奮気味に自らの狼狽え様を語る女子高生の身体に再びサトウが入り込んだということは、言われずとも窺い知れるというものだ。女子高生はまだ震えが収まっていないらしい脚でゆっくりと立ち上がり、今度は打って変わって元気な声でこう言うのだった。

「はいっ、というわけで◯◯高校二年生の笹川歩ちゃんでしたー」

どっと湧いた拍手と歓声を受け取った女子高生は、また鼻をすすりながら照れ臭そうな表情を見せていた。その後の質問コーナーではスリーサイズだの経験人数だのお約束の質問が飛び交い、そこでサトウが部屋着姿の彼女の身体を乗っ取った後にわざわざ制服に着替えたのだということを知った。言われて見れば今日は休日なのだから、制服を着ているというのもおかしな話だ。なんでも自室で寝ている彼女に乗り移った後、クローゼットを漁って一通りの着せ替えショーを済ませてきたのだとか。身体を求めて家を一件一件物色するのは手間がかかるが、その分得られる見返りは大きいのだということを改めて痛感させられてしまった。まあ今日の俺は労せずしてこれだけ良い身体を手に入れることが出来たのだから、と心の中でぼやいてはみるが、負け惜しみの感は否めない。

「それじゃあ次は俺ですね。よいしょ」

拍手に見送られながら席に着いた女子高生を横目にモデル美女が立ち上がり、わざとらしい動作で大きく伸びをしてみせた。胸を見せつけたかったのだろうという意図は容易に想像が付いた。何しろそれだけで会場にどよめきが起こった程だ。Gは下らないんじゃなかろうか。

「凄いですよねーこの胸。あ、感度は微妙なんですけど」

そう言って笑いを取るモデル美女は、今度は艶のあるストレートの黒髪を撫で付けながら自己紹介の前準備を続けていた。中身の男と本人との落差を際立たせる為の、敢えての下ネタトークなのだろう。皆のツボを理解した上での玄人らしい立ち回りだ。

「それで中身は俺、キシダです。改めてよろしくー」

彼女がその一言を放った瞬間、和やかだった会場の雰囲気が少し軋んだような張り詰めたような、そんな感覚を覚えた。多分気のせいではないと思う。誰かが上げた乾いた笑い声が嫌に耳に残った。

「あー、ほらまた俺って分かるといつもそう。なんなんだよー」

そう言って笑う彼女に、これまた乾いた笑いで返す会場の面々。最早彼女に向けられるのは期待の眼差しでもなんでもなく、有るのは身体の持ち主への同情心だけだった。言える立場ではないのだが、俺だって同情することしか出来ない。キシダに乗っ取られた女性がどういう末路を辿るのか、皆嫌という程に知っている。
嘔吐フェチとでも言うのだろうか、キシダはそういう奴なのだ。乗っ取った身体に散々酒を叩き込んだ挙げ句、堪らず戻した吐瀉物をその、何やかんやするらしい。具体的な行為は実際には見たことが無いし、見たいとも思わない。ただ憑依飲み会が終わる頃にはいつも、自らの吐瀉物に塗れながら呆けた顔で笑うキシダの顔で締められるのがお約束となっていた。嫌なお約束も有ったものだ。
或いは彼女が奇跡的な迄の酒豪であれば、どうと言うこともないまま解放され得るのかもしれないが。そう思った矢先にグラスに並々と注がれたウイスキーをストレートであおり、大きくげっぷをしたモデル美女は頬を紅潮させながら続けるのだった。望みは薄そうだ。

「それじゃあ自己紹介行きますねー」

キシダが抜け出た後のモデル美女の狼狽え様は、それはもう見るに耐えないものだった。酩酊状態でおどおどするという反応そのものは先程の女子高生と大差無かったのだが、何しろ彼女にはこの後苛烈極まりない運命が待ち受けているのだ。涙無しでは見られない。それでも何人かはこの状態を楽しむことの出来る強者もいるようで、「ねーちゃん背中さすってあげようかー?」などといった野次が飛び出すのであった。それを聞いたモデル美女の怯える顔がこれまた不憫で、俺はそっと目を伏せた。

そこからは順々に自己紹介が続き、会場の興奮は段々と高まりつつあった。毎度のイベントではあるのだが、こうして身体本人の素の反応を眺めるというのはどうにも飽きが来ないものだ。大抵の者は恐怖に満ちた表情を見せた後に逃げ出そうとするか、或いは半狂乱で喚き散らすかしてくれるのだが、いずれも男が乗り移った状態では見られない表情だ。例の小柄な少女などは嗚咽を上げて泣き叫ぶものだから、危うく店員に見つかってしまうところだった。どうも本当に小◯生だったらしく、ロリ趣味のマエダの実直ぶりに皆苦笑したものだ。女性たちの涙を肴に酒を飲むという真似をしている以上、俺もキシダのことをとやかく言うことなど出来ないのかもしれない。
そうこうしている間に隣にまで順番が迫って来ていたらしく、気付けばパーマの女性が涙ながらに俺の腕を掴んでいた。誰でもいいから助けが欲しかったのだろうが、俺はそれを横目に特に手を差し伸べることも無く、空いた方の手で持ち直したグラスをあおった。直後彼女の身体がビクンと震え、寄りすがる腕が自ら振りほどかれる。次は俺の番と言う訳だ。
酒のせいかやたらと重く感じられる身体を立ち上がらせ、改めて会場を見渡してみる。皆やはり飽きもせずに期待に満ちた表情で俺を見つめてくれている。いい加減酒が回って来たのだろう、黙ったままの者は殆どおらず、「うわ、可愛い」とか「胸でかいな」といった声が聞こえてきて気分が良い。斜め向かいに座った女性だけは口をつぐんだままのようだったが、もぞもぞと動き回る手元を見るに恐らく自慰行為に耽っているのだろう。それならば仕方がない。
俺は視線を下げ、改めて自分の身体を見下ろした。息をする度に張り出す胸の先には、セーターの上からでも分かる程に尖った二つの膨らみが見えた。ここに来る前に下着を脱ぎ捨ててしまっていたからなのだが、その様子が何ともいやらしくて気分が浮き立ってしまう。生地に擦れる乳首の感覚を受け取りつつ、俺は再び顔を上げた。この娘はどんな表情を見せてくれるのだろう。そんなことを考えながら適当に挨拶を済ませた俺は、倒れ込まないようにと座り直した後、この身体へと巡らせた支配を一旦解いた。
ぬるんとした特有の感触と、重力から解き放たれた浮遊感。気付けば俺は目に見えない幽体となって宙に浮かび、目の前には虚ろな目をした女子大生が項垂れていた。

「……う、んん……あれ……?」

お決まりの反応だった。何も知らない女子大生はその可愛らしい顔を訝しげに、かと思えば不安げに、次々と俺には作ることの出来ない表情を見せてくれた。湧き上がる歓喜の声も、もう俺の耳には届かない。ただ柔らかなその身体を本来の持ち主が狼狽えながら動かす様を目に焼き付けるだけだ。きょろきょろと周囲を見渡す度に揺れるさらさらのセミロング。セーターの下で綺麗な形を保ち続ける豊満な膨らみ。この身体をつい直前まで俺が動かしていたのかと思うと、胸が張り裂けんばかりの興奮に襲われそうになる。

「私……私、買い物してた筈じゃ……」

これもお決まりの反応だ。鉄板だからこそ、味わい深い。俺は舐めるように幽体を彼女の身体に這いずり回らせながら、再び乗り移る機会を伺った。目の前で震える彼女の様を見ているだけで、今すぐにでもその身体に飛び込んでやりたくなってしまうのだが、それではこれ以上本来の彼女を楽しむことが出来なくなってしまう。他の連中からも顰蹙を買ってしまうことだろう。あくまで慎重に表面をなぞるように、でも離れることはせず、俺は一人の女子大生の身体を外側から楽しんだ。

「なにこれ、なにこれ……」

そろそろ潮時だろうか。高まりきった面々の野次を受けた彼女は、涙を流しながらそれでも逃げ出す様子は見せず、ただその場で怯えるばかりだった。もう少し粘ることは出来そうではあったが、俺の方が我慢の限界だった。この身体を動かしたい。セーターが包む彼女の体温を彼女の身体で感じたい。この涙で濡れた顔をもう一度俺の笑顔で歪めてあげたい。そんな欲をどうしても押さえることが出来ず、俺は彼女の背中辺りで這い回らせていた幽体をそのままセーターの生地の向こう側へと滑り込ませた。

「ひぅっ……!」

彼女が上げた悲鳴を彼女の耳が拾い取り、しかしその信号を彼女自身が受け取ることは無く、ただ俺の精神を昂らせるだけに終わった。瞬時の内に支配の糸を彼女の隅々まで行き渡らせた俺は、彼女の温かな体温と柔らかな感触と、それに鼻腔をくすぐる仄かな香りを再び取り戻した喜びに震えていた。少しの間離れていただけなのに、何故だかとても懐かしく感じられる彼女の感覚。自分の身体を自分でひしと抱き締めた俺は、名前などとうに忘れてしまっていたので「ただいま、女子大生ちゃん……」とだけ彼女の唇で呟いた。

「うわ、お前流石にそれはキモいわぁ」
「キシダのこと言えないですよねー」

そんな野次が聞こえてきたので俺は少し恥ずかしくなって、彼女の頬を赤らめながらはにかんだ。それでも俺はこの瞬間が本当に大好きなのだ。茶々を入れるのは止めて貰いたいものだ、と憤る気持ちも無いではなかったが、そう言う彼女らの表情もまた天使のように可愛いらしかったので許してやることにする。
そういえばキシダの奴はどこに行ったのだろう。名前が出たから思い出したのだが、あのモデル美女の姿が先程から見当たらない。大方俺が興奮の真っ只中にいる最中にトイレにでも立ったのだろうが。そこで彼女がどんな目に遭わされているのか、自らの手でどんなおぞましい行為をさせられているのだろうか、やはり想像もしたくない。モデル美女とトイレの後始末をさせられるであろう店員には同情する他無かった。


「えー、それでは宴もたけなわですがそろそろお時間の方がですねー」

すっかりアルコールで紅潮仕切った顔を披露しながら、幹事サトウの操る女子高生は締めの挨拶にかかっていた。いつの間にそんな時間が経っていたのかと壁に掛けられていた時計を見ると、確かにここに来てから早くも四時間が過ぎてしまっていた。毎度思うことだが、憑依飲み会というのは時間が過ぎるのがとにかく早い。パーカー少女の身体が倒れ込んだ拍子に鍋をひっくり返してしまったのも、パーマの女性が一発芸と称して特大ディルドによる自慰行為を披露したのも、小◯生の少女が持参の精液一気飲みというアウト極まりないパフォーマンスを見せ付けたのも、全てがつい先程のことのように感じられた。それでも何事にも終わりは有るもので、名残惜しいがこの場はこれでお開きだ。相も変わらず親父臭い口上に促されての一本締めが居酒屋に響き渡り、第十七回憑依飲み会は幕を閉じたのだった。

「えーと、じゃあ二次会にお越しの方はー」

直後上げられたその声に皆の顔付きががらりと変わったのは、多分気のせいではないだろう。俺の顔も、この女子大生の顔も、きっと欲望に塗れ歪みきっている筈だ。
そう、憑依飲み会は勿論これだけでは終わらない。幕を閉じたのは一次会で、これからはお楽しみの二次会の始まりだ。欠席する奴などいるわけがない。職場の二次会などとは訳が違うのだ。

「皆参加で大丈夫ですかね? えーと、個別でラブホとか行きたい方は手を挙げてー」

手を挙げる者は誰もいない。余程その身体が気に入っただとか、どうしても二人だけで楽しみたいだとかいったケースは皆無ではないのだが、やはりこういったことは大人数で楽しんでこそだ。こういったこととは勿論、適当な大部屋を貸し切っての組んず解れつである。お互いの身体を交換しあったり、一旦本人に返した身体を皆で囲んで犯したり。酒を飲んで言葉を交わすことも勿論だが、やはりせっかく女の身体を持ってきたのだからこれが無くては始まらない。

「皆で行きましょうよー」
「幹事、どっか場所取ってるんです?」
「広めのコテージを借りてありますよ。ちょっと遠いですけど」
「タクシーでも使うんすか?」
「ああ、適当な車乗っ取ってくるのでですね。その間この身体よろしく頼みますということで」
「了解ー。あ、じゃあ待ってる間そのJK借りちゃって良いです?」

そんな会話をしながら会計を済ませた俺たちは、便器に顔を突っ込みながら股間をまさぐっていたらしいモデル美女をトイレから引きずり出し、次なる会場へと向かう手筈を整えるのだった。足の調達を路地裏で待つ間は、買い出し班を除く面子で女子高生の身体を使い回しながら、誰が一番色っぽくイケるかを競ったりなどして時間を潰すことにした。とりあえずモデル美女にはシャワーを浴びて貰ってからだな、と誰かが呟き、皆が笑った。
夜明けまでなどと言うつもりは更々ない。素晴らしい身体に出会えた幸運を、時間と体力の許す限り貪り尽くす。それこそが憑依飲み会の目的であり、また存在意義でもあった。宴はまだ始まったばかりで、女たちの身体はそれを待ちわびているかのように新たな蜜を滴らせ始めていた。

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コメント

ツイッターでも感想お伝えしましたが、実は読んだその夜我慢できず使用しましたので改めて報告をば……。

「自己紹介」の素晴らしさについては既に述べさせていただきましたが、憑依した美しい女性の身体で盛大に飲んで酔っ払うという体験自体憧れで、同趣味の連中で集まってとなれば尚更楽しそうです!
その後、お互い持ち寄った身体での乱交を想像するともう大興奮で……! 何より、ひとりの少女の身体を交代で使い回す光景を想像すると我慢できませんでした。次々に雰囲気を変えながらも痴態を繰り返す少女と、弄ばれる少女をニヤケ顔でみつめる美女美少女たち……最高です。それを描いた作品なんてのもそうそうないでしょうしね!

Re: タイトルなし

>nekomeさん
まさかこちらでも改めてコメント頂けるとは…重ね重ね有り難うございます!
身勝手な連中による宴会、といった雰囲気をそれっぽく描けたら良いかなぁぐらいに思っていたのですが、楽しそうだと思って頂けたのであれば書き手冥利に尽きます。ありがたやありがたや
一次会以降のくだりは投げっぱなし気味かなと自分で思ってしまう部分も有ったのですが、だからこそ妄想が捗るというのは有るのかもしれないと思ったり…。出来ればそこら辺がっつり書いてみたいものですねー。上手く書ければ実用性待ったなし!

つづきみたいですー

はじめまして。
今まで数多くのTSF系作品を読んできましたが、この憑依飲み会や三丁目のヤらせ屋さん。どちらも自分のベスト5に入る作品です!
こういう乗っとり憑依系が大好きなんで、これからも勝手に期待してます。

Re: タイトルなし

> つづきみたいですー
有難うございます!
書きたくはあるのですがハードル上がってる感があってアレなのでしばらくかかりそうです!

Re: タイトルなし

> ひろさん
ベスト5は言い過ぎじゃないかと思ってしまったりもするのですが、有難うございます!
ヤラセ屋さんは個人的にも思い入れの有る作品なので、本当に嬉しく思います。改めてあの手の話を練り直してみても良いかもしれないと思ってみたり…

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ぽぜおくん

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